まだ道の半ば

直前まで誰も確信していなかった南アフリカでの勝利。
それだけでなく2勝を挙げての16強への進出。
それは純粋に喜ばしい結果であり、選手達の戦い振りは
充分胸を張り、誇れるものだった。
お疲れ様。ありがとう。そんな感謝の言葉は惜しまない。


だが、やっぱり敢えて言わずにはいられない。
「もっとやれたんじゃないか?こんなもんじゃないだろ?」
確かに日本サッカーはようやく一歩前へと踏み出すことはできた。
ただ、踏み出しただけで、前進したとは言えないと感じる。
しっかりと組織的に、特に守備に重点を置いて戦えば、これくらいは
できて当然であると思っているから。
そして相手にも恵まれた部分もある。カメルーンデンマークには
組織の綻びが多分に見られたから。
それこそ4年前の日本代表の惨状を思い起こすような。


岡田監督を今更持ち上げるような空気がなんとなく漂いつつあるが
それもちょっと待ってほしい。
確かにずっと固定に限りなく近い形だったレギュラーを直前で
切り替え、守備に光明を見出したことは英断だったかもしれない。
しかし、その英断は遅すぎたのではないか。
もし、その英断をもう少しはやく、メンバーを登録する前に出来ていたら。
それができていたら、“戦えない”選手を無駄に連れて行くことなく、
その代わりに、守備的な戦術にマッチし、より“戦える”選手を連れて
行くことができたんじゃないか。
結局戦術は基本的に守備しかなかった。
カメルーン戦にしろ、デンマーク戦にしろ、幸運にも少ないチャンスで
前半に先制点を奪うことが出来た。それによって勝利を掴むことが出来た。
しかし、オランダ戦にしろ、パラグアイ戦にしろ、先制点を奪えず、
それどころか、得点を奪うことができなかった。
守備から攻撃にスイッチを切り替えることは出来なかった。
交代選手を利用して攻撃のやり方を変える、あるいはリスクを冒してでも
得点を奪いにいく時間、流れを作る。
そうした采配は何一つ効果的に出来なかった。
だから岡田監督が成功したとは思えない。
お疲れ様でしたというねぎらいの言葉くらいはかけたいが、かといって、
よくやった、散々批判してごめんなさいと謝るつもりは一切ない。


まぁ、文句ばっかり並べ立ててきたけれど、それでも日本代表の戦いに
興奮し、感動し、誇りを感じたことは間違いない事実。
本当によくやってくれたと思う。
が、重ね重ねくどいようだが、全然こんなもんで満足していないし、
満足してほしくない。
まだまだ世界は上にいるし、もっともっとそれに向けてレベルアップして
いかないといけない。やってる側も見守る側も。
本当にこの国のマスコミは堕落させるのが何より上手い。
ベスト16で負けて帰って、ニコニコとだらけた笑顔で満足げに会見なんて
してる場合じゃねえって。その程度かよ。
結局ベスト16の壁は越えられなかった。2002年と変わらない。
一次リーグ突破で満足せずにベスト16でも最後まで戦った。
その違いの分だけ、少しだけ前に踏み出しただけに過ぎない。
まだ道は半ば。
南アフリカでの戦いは終わったが、フットボールは続いていくんだから。